ハツリストという蛮族がいる

「ちょうな」で木をハツる、木を耕す日々

木の乾燥について

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材料は、こんな風に乾かしています。
山の製材所で仕入れてきた木を、雨に当て風を通して、アクと水分を抜いていきます。
全ての木をこのように乾かしています。材木屋さんが「この木は乾いています」と言っても信用しません。製材して屋根の下に置いてあっただけの木は、ただの「置いてあった木」で、「乾いた木」とは違うのです。何年置いてあっても乾いたように見えるだけで決して乾いていないので、雨風に晒します。本当に乾かすというのは、
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木の皮に近い部分は苔むし、
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外側は、やや腐りかけ
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木目が浮かび上がる。
それでも中身は赤くしっかりしている、という状態です。

乾かす間には、当然、割れたり反ったりしますから、割れて使えない部分もあって無駄が出るのですが、ここで木の癖を出しておくことで、製品になってからの割れや反りが起こりにくい、ということになります。その間、ひっくり返して風の当たる面を変えたり、時々は持ち上げて乾き具合を確認したり、ほどほど手間がかかりますが、こういう材料の選定・管理といった地味な作業が技術の大事な部分を占め、最終的な製品の良し悪しの九割方を左右するので疎かには出来ません。

時々、どれくらい干すのか質問される方がありますが、自然の生き物相手に、決まりきった答えは無いものでして、木の種類、大きさ、伐った時期などにより様々なので一概には答えられないのです。外に三ヶ月干しておくだけで乾く木もあれば、一年雨に当てた後五年屋根の下で乾かしてようやく使える木もあります。

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この木も五年以上乾かして、さらに風に当てるため外に出してきた木で、70cm以上の幅があります。
今回、大きな仕事のための材料が支給されるはずでしたが、全くお話にならないレベルのものが供給され、全然使えないので、仕方なしに私の手持ちの材料を使うことになりました。70cm以上の幅6cm厚の板が最終的に36cm幅3cm厚になってしまいますので、かなり無駄が出てしまい、勿体無く、またその分は私が赤字を被らなくてはいけないのですが、致し方ないことです。それほどまでに、木を乾かす、いつでも使える準備をしておくということは厳しいものなのです。そこがわからない方々と仕事をすると、こういうことは、ままあります。あれほど説明して、こういう木を出してくれとお願いしたのに、と落胆することになるのですが、結局これは、最終的な製品に責任を負うものの真剣さと、負わないもののお気楽さの違いから生まれることで致し方ありません。
しかし、こと「ハツリに向いた木でよく乾いたもの」ということに関しては、県内有数の林業家でも、私の手持ちの材料以上のものを出すことが出来ない、という事実は一つの自信を与えてくれました。こんなニッチなことでも、コツコツやってれば、大きな有名なところでも出来ないことを、たった一人で出来るようになれる、ということがわかって、ちょっと嬉しかったです。私には所有する山林も無ければカネもコネも無いが、技術と感性と曲がった枝に付けた刃物ひとつで全てをひっくり返す、カネで買えない価値感を作り出す、こういうことにしか職人の自尊心はないのだな、と改めて思う。というところで心の隙間は埋まったが、材料の分の赤字は埋まらんままじゃ〜〜。ガオ〜〜〜〜っ。

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